船上ヤマト
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子どものころ、両親が連れていってくれる海はほとんど岩場で、中でも一番好きだったのは新潟の「笹川流れ」。砂利と岩からなるそこは海水が濁ることがなく、いつもとびきりきれいだった。
波打ち際から1メートル足らずで急に深くなり、10メートルほど沖の岩場にはウニや牡蠣、貝がごっそりくっついた。そこかしこに聞こえる生命の呼吸はとてもエキサイティングで、同時に、得体のしれないものに囲まれているような怖さも感じた。それでも、飽きることなく海の中を見続け、何かを見つけてはしずかに歓喜した。
単純に父の好みだっただけかもしれないけれど、砂浜に比べ親の注意力たるや相当必要だっただろう。それでも、浮き輪とビーチボールの代わりに、ゴーグルとシュノーケルの使い方を教えてくれたことを、いまとてもありがたく思う。
トロピカルな魚と白い砂浜より、もっと力強く、リアルに生を感じる海が好きなのだ。パラソルの下でお昼寝するより、漁船のふちで波に揺られたいし、海の家のかき氷よりも、モリで突いた魚を焼いて食べたい。
パレオを巻く代わりに、腰には網をくくりたい。
そんなことを考えていたら、なるほど、ダイビングを止めた理由にも納得がいった。